洗濯機で靴を洗った後、「脱水」ボタンを押すのは勇気がいりますよね。
「ゴトゴトとすごい音がして洗濯機が壊れるかも…」そんな不安を感じる方も多いはずです。
この記事では、洗濯機のエキスパートとして、ご家庭の洗濯機で靴を安全に脱水する全手順を徹底解説します。
洗濯ネットやタオルの正しい使い方、故障を防ぐ必須の準備、そして脱水後の「乾燥」で失敗しないための方法まで網羅。
コインランドリーの活用術や、便利な靴乾燥機という選択肢もご紹介します。
- 洗濯機での靴の脱水は「タオルで包みネットに入れる」
- 脱水時間は「2~3分」の最短設定が基本
- 家庭用洗濯機の「乾燥」機能は絶対に使用しない
- 最も安全なのはコインランドリーか専用の靴乾燥機
洗濯機で靴を安全に脱水する全手順と注意点
- まず確認!洗濯機で洗える靴・洗えない靴
- 故障させない!脱水前の必須準備
- 脱水時の「音」と「振動」を防ぐ工夫
- 洗濯機での脱水、推奨時間と注意点
まず確認!洗濯機で洗える靴・洗えない靴

洗濯機での脱水を考える前に、その靴が「洗濯機で洗える」素材と構造であるかを確認することが最も重要です。この判断を誤ると、脱水以前に靴が履けない状態になってしまう可能性があります。
まず、洗濯機で洗える靴の代表は、布製のスニーカー、上履き、スリッポンなどです。具体的には、綿(コットン)、化学繊維(ポリエステルやナイロン)、合成皮革といった素材で作られている靴がこれにあたります。これらの素材は水や洗濯機の動きに比較的耐性があるため、適切な手順を踏めば家庭での洗浄が可能です。
一方で、洗濯機で絶対に洗ってはいけない靴も数多く存在します。代表的なのは、革靴やスエード素材の靴です。これらは水に濡れると硬化、シミ、型崩れの原因となります。また、スパイク付きのシューズ、ヒールの高いパンプス、装飾が多く接着剤で固定されている靴、ブーツなども洗濯機には適しません。これらの靴は、その硬い部分や突起物が洗濯槽を直接傷つける「物理的なリスク」と、靴自体が洗濯の衝撃に耐えられず「構造的に破損するリスク」の両方を抱えています。
洗える靴かどうかを判断する最も確実な方法は、靴の内側にある洗濯表示タグを確認することです。もしタグがない、または判断に迷う場合は、メーカーの公式サイトで情報を確認するか、手洗いを前提に考えるのが賢明です。
| 洗濯機で対応できる靴 | 洗濯機で対応できない靴 |
| 布製のスニーカー | 革靴、スエード素材の靴 |
| 上履き、スリッポン | スパイクシューズ、ゴルフシューズ |
| 綿、化学繊維、合成皮革製の靴 | ヒールのある靴、パンプス |
| ランニングシューズ(素材による) | ブーツ、長靴 |
| 金属などの装飾が多い靴 | |
| 接着剤でソールが固定されている靴 |
故障させない!脱水前の必須準備

靴を洗濯機に入れる前には、洗濯機本体を故障から守るために必須の準備作業があります。これを怠ると、洗濯槽の傷つきや、最悪の場合は排水系統の故障につながる可能性があるため、必ず実行してください。
最も重要な作業は、靴の裏に挟まった小石や泥、砂を徹底的に取り除くことです。靴の溝に入り込んだ小石は、一見すると無害に思えるかもしれません。しかし、これが洗濯中に外れると、高速で回転する洗濯槽の内壁を傷つける原因となります。
それ以上に深刻なのは、小石が洗濯槽の排水穴を通り抜け、その先にある「排水ポンプ」に詰まるケースです。小さな石がポンプの羽根(インペラ)に噛みこむと、排水エラーで洗濯機が停止するだけでなく、ポンプ自体の交換という高額な修理が必要になることもあります。必ず乾いた状態で、使い古しの歯ブラシやたわしを使い、溝の奥までしっかりと異物を取り除いてください。
次に、靴紐と中敷き(インソール)を外します。靴紐をつけたまま洗うと、紐が洗濯槽の穴や他の部分に絡まり、予期せぬ破損を引き起こす可能性があります。また、中敷きを入れたままでは、中敷きの下に汚れが残り、生乾きの原因にもなります。外した靴紐や中敷きは、靴本体とは別に小さな洗濯ネットに入れて一緒に洗うか、個別に手洗いときれいに仕上がります。このひと手間が、洗濯機を守り、靴をより清潔に、そして早く乾かすことにつながります。
脱水時の「音」と「振動」を防ぐ工夫

家庭用洗濯機で靴を脱水する際に、ユーザーが最も恐れるのが「ゴトゴト!」「ガコン!」という異常な音と振動です。この現象は、重たく硬い靴が、高速回転する洗濯槽の中で偏り、内壁に激しく衝突することで発生します。この衝撃は、洗濯槽を支えるサスペンションやモーターに深刻なダメージを与え、洗濯機の寿命を縮める直接的な原因となります。
この振動と騒音を防ぐための最も効果的な対策は、「緩衝(クッション)」と「固定(コンテインメント)」です。
具体的には、まず使い古しのバスタオルを2枚ほど用意し、靴(片足ずつ)をしっかりと包み込みます。ランニングシューズなど、型崩れが気になる靴の場合は、靴の中に小さく丸めたタオルを詰めてから、外側を別のタオルで包むとより安心です。
次に、タオルで包んだ靴を「靴専用の洗濯ネット」に入れます。靴専用ネットは、通常のネットよりも厚手でクッション性があり、万が一タオルがほどけても靴が直接洗濯槽に当たるのを防いでくれます。もし専用ネットがない場合は、厚手の洗濯ネットで代用し、靴がネットの中で動かないよう、タオルの結び目を固くするか、ネットの余った部分を縛るなど工夫してください。
この「タオルで包み、ネットに入れる」という二重の対策こそが、硬い靴を洗濯機のバランスセンサーが「管理可能な洗濯物」として認識できるようにするための鍵です。ドラム式洗濯機の場合は、このネットに入れた靴と一緒に、他のバスタオルを2~3枚加えると、全体の重量バランスが改善され、さらにスムーズに脱水できることがあります。一度に脱水する靴は、バランスを保つためにも最大2足までにしてください。
洗濯機での脱水、推奨時間と注意点
適切な準備を整えたら、いよいよ洗濯機の「脱水」工程に移ります。ここで絶対に間違えてはいけないのが、「脱水時間」と「乾燥機能の使用」です。
まず、脱水時間は「2分から3分」の最短設定を選んでください。洗濯機の「脱水のみ」コースを選択し、時間を手動で設定します。靴の脱水の目的は、衣類のようにカラカラにすることではなく、あくまで「水滴が滴らない程度に、余分な水分を遠心力で飛ばす」ことです。3分程度の短い脱水でも、この目的は十分に達成できます。逆に、長時間脱水すると、それだけ洗濯槽に負担がかかる時間が増え、振動によるリスクが高まるだけでなく、靴自体の型崩れにもつながります。
そして、最も重要な注意点があります。それは、家庭用洗濯機に搭載されている「乾燥機能」は絶対に使用しないことです。
ユーザーは「脱水」も「乾燥」も靴を乾かす工程として混同しがちですが、両者は根本的に異なります。「脱水」は遠心力で水分を飛ばす機械的な工程です。一方、「乾燥」はヒーターによる高温の風を当てながら、洗濯槽(ドラム)を回転させて水分を蒸発させる化学的・物理的な工程です。
家庭用乾燥機のほとんどは、衣類をふんわりさせるためにドラムを回転させる「タンブラー乾燥(回るタイプ)」を採用しています。この回転するドラムの中で、高温の風にさらされた靴は、接着剤が剥がれたり、ソールが変形したりと、修復不可能なダメージを受けてしまいます。脱水が終わったら、絶対に「乾燥」ボタンは押さず、すぐに洗濯機から取り出してください。
靴の洗濯と脱水、その後の「乾燥」完全ガイド
- 自宅が不安な方へ:コインランドリー活用術
- 脱水後の「正しい乾かし方」
- 「靴乾燥機」という選択肢
自宅が不安な方へ:コインランドリー活用術

ご家庭の洗濯機で靴を脱水することに、どうしても抵抗がある、あるいは洗濯機を壊してしまわないか不安だという方には、コインランドリーの「スニーカーランドリー」の活用を強くおすすめします。これは、家庭用洗濯機で無理やり行うのとは全く異なる、靴を洗うためだけに設計された専用のソリューションです。
スニーカーランドリーは、通常「スニーカーウォッシャー(洗濯機)」と「スニーカードライヤー(乾燥機)」がセットで設置されています。
スニーカーウォッシャーは、衣類用の洗濯機とは構造が異なり、洗濯槽の中央に大きなブラシが内蔵されています。ここに靴を入れると、ブラシが回転し、洗剤の泡とともに靴の表面や内部の汚れを物理的にこすり落としてくれます。家庭用洗濯機では不可能な「洗い」と「すすぎ」が可能です。料金は1回200円程度で、大人の靴なら2足、子供の靴なら4足程度を約20分で洗濯できます。洗剤も自動で投入されるため、手ぶらで行けるのも魅力です。
そして、最も注目すべきはスニーカードライヤーです。これは家庭用乾燥機とは異なり、靴を固定した状態で乾燥させます。乾燥機内部には靴を差し込むためのハンガー(ノズル)が複数あり、そこに靴をセットすると、ノズルから温風が靴の内部に直接吹き付けられます。靴が回転しないため型崩れの心配が少なく、靴の内部からつま先までしっかりと、約20分(100円)で乾かすことができます。
合計でも40分から1時間、数百円程度で、洗濯から乾燥まで、靴にも洗濯機にも一切のダメージを与えることなく完了できます。これは単なる「代替案」ではなく、靴の洗濯においては「プロ仕様の最適解」と言えるでしょう。
脱水後の「正しい乾かし方」

洗濯機での2~3分の脱水が無事に終わったら、すぐに洗濯機から靴を取り出してください。濡れたまま洗濯槽に放置すると、雑菌が繁殖し、せっかく洗った靴から嫌なニオイやカビが発生する原因となります。
脱水後の靴を乾かす上で、最も重要な原則は「風通しの良い日陰で干す」ことです。
多くの人が「早く乾かしたい」という理由で、直射日光が当たる場所に干してしまいがちですが、これは大きな間違いです。太陽光に含まれる紫外線は、強力な漂白作用と素材を劣化させる作用を持っています。布製のスニーカーは色あせ(日焼け)を起こし、合成皮革やソールのゴム部分は紫外線の影響で硬化し、ひび割れの原因にもなります。せっかく汚れを落としたのに、乾燥の段階で靴を台無しにしては意味がありません。
必ず、ベランダの軒下や室内など、直射日光が当たらず、なおかつ空気の流れがある場所を選んでください。
この「日陰干し」を効率よく行うために、いくつか工夫をしましょう。靴専用のシューズハンガーを使い、靴を逆さま(つま先が下)になるように吊るすと、内部に空気が通りやすくなり、水分の蒸発が促進されます。もしハンガーがない場合は、靴の中に丸めた新聞紙を詰め込むのも非常に効果的です。新聞紙が内部の水分を吸収してくれます。ただし、新聞紙は湿ったらこまめに新しいものと交換してください。
洗濯機での短い脱水は、この「日陰干し」を成功させるための前準備です。脱水によって余分な水分が取り除かれているからこそ、日陰でも数時間から1日で乾かすことが可能になるのです。
「靴乾燥機」という選択肢
ご家庭での靴の乾燥において、「日陰干しは時間がかかって不便」「梅雨の時期は全く乾かない」といった不満を抱える方は少なくありません。また、コインランドリーが近くにない、あるいは毎回通うのは面倒だという方もいるでしょう。
こうした「自宅で、安全に、素早く乾かしたい」という潜在的なニーズを完璧に解決するのが、「靴乾燥機」という専用家電です。これは、ご家庭の洗濯機や乾燥機とは一線を画す、まさに靴のための最適な乾燥ソリューションです。
靴乾燥機には、主に2つのタイプがあります。一つは、本体から伸びるノズルを靴の中に差し込む「ノズルタイプ」です。ノズルが伸縮するモデルもあり、スニーカーから長靴、ブーツまで対応できる汎用性の高さが魅力です。もう一つは、ヒーターが内蔵されたユニットを靴の中に直接入れる「インサートタイプ」で、非常にコンパクトで収納場所に困らないのが利点です。
これらの靴乾燥機は、コインランドリーのスニーカードライヤーと同様に、靴を回転させることなく「静止」させた状態で、内部から温風や送風で乾燥させます。そのため、型崩れの心配は一切ありません。
さらに、最近のモデルには便利な付加機能が搭載されています。靴のニオイの原因となる雑菌の繁殖を防ぐため、「オゾン脱臭」機能や「UV(紫外線)照射」機能を備えた製品もあります。単に乾かすだけでなく、靴を衛生的に保つケアまで同時に行えるのです。また、「革靴モード(低温)」と「標準モード(温風)」を切り替えられる製品や、タイマー機能で過乾燥を防げる製品もあり、デリケートな素材の靴にも安心して使用できます。
家庭用洗濯機でのリスクある脱水に悩むよりも、一台、靴乾燥機を導入する方が、長期的に見て靴の寿命を延ばし、日々の快適さを格段に向上させる賢明な投資と言えるでしょう。
| 乾燥方法 | 所要時間(目安) | コスト(目安) | 主な特徴・リスク |
| 風通しの良い日陰干し | 1日~2日 | ほぼ0円 | 安全だが時間がかかる。天候に左右される。 |
| 家庭用洗濯乾燥機 | (不明) | (電気代) | 【非推奨】 タンブラー回転により型崩れや破損の危険性が極めて高い。 |
| コインランドリー乾燥機 | 約20分~40分 | 100円~200円 | 最も安全で早い。静止乾燥で型崩れなし。ただし、店舗に行く手間がかかる。 |
| 家庭用 靴乾燥機 | 約30分~2時間 | (電気代) | 自宅で安全・確実に乾燥できる。オゾン脱臭など付加機能も。初期費用がかかる。 |
総括:洗濯機の靴脱水は「準備」が全て、安全策は「専用品」にあり
この記事のまとめです。
- 洗濯機での靴の脱水は、素材と準備が適切であれば可能である
- 洗濯機で洗える靴は、布製スニーカーや上履きなどに限られる
- 革靴、スエード、スパイク、ブーツは洗濯機での洗浄・脱水を避けるべきである
- 脱水前には、靴裏の小石や泥を完全に除去することが必須である
- 小石の除去は、洗濯槽の傷や排水ポンプの故障を防ぐために行う
- 靴紐と中敷きは、洗浄効果と乾燥効率を高めるために必ず外す
- 脱水時の振動と騒音は、洗濯機の故障につながる危険信号である
- 対策として、靴をバスタオルで厳重に包むことが有効である
- タオルで包んだ靴は、さらにクッション性のある靴専用ネットに入れる
- 脱水時間は「2~3分」の最短時間に手動で設定する
- 家庭用洗濯乾燥機の「乾燥」機能は、靴の変形を招くため絶対に使用禁止である
- 「脱水」は遠心力、「乾燥」は熱と回転であり、根本的に異なる
- 脱水後の靴は、色あせや劣化を防ぐため「風通しの良い日陰」で干す
- 最も安全で確実な方法は、コインランドリーの「スニーカーランドリー」の利用である
- 自宅での利便性と安全性を両立する「靴乾燥機」の導入が、専門家として最も推奨する選択肢である

