「あれ?なんだか洗濯機周りがドブ臭い…」昨日まで普通だったのに、急に発生した下水のような臭いに驚いていませんか。その不快な臭い、実は洗濯槽内部のカビが原因ではないかもしれません。
急なドブ臭さの9割は、洗濯機本体ではなく、その足元にある「排水口」や「排水トラップ」の異常が原因です。
この記事では、洗濯機エキスパートが、そのドブ臭い臭いの原因である「封水切れ」の応急処置から、排水ホースの根本的な掃除手順、さらにはドラム式特有の落とし穴まで徹底解説します。正しい知識で、その臭いを今すぐ断ち切りましょう。
- 急なドブ臭いの9割は洗濯槽でなく「排水口」が原因
- 応急処置は排水口への「封水」の補充
- 排水トラップとホースの掃除で臭いを根本解決
- メーカー非推奨のクエン酸や重曹での掃除はNG
洗濯機が急にドブ臭い!下水の臭いを断つ排水口の応急処置
- 臭いの9割は排水口?「封水切れ」を今すぐ確認
- 排水トラップの分解と掃除手順(縦型・ドラム式共通)
- 見落としがちな排水ホース内部のヘドロ洗浄
- ドラム式特有「乾燥による封水蒸発」の罠
臭いの9割は排水口?「封水切れ」を今すぐ確認
洗濯機から「急に」ドブのような下水臭がした場合、洗濯槽の汚れを疑う方が多いのですが、その臭いの9割は洗濯槽本体ではなく、足元の「排水口」に原因があります。
洗濯機の排水口には、通常「排水トラップ」と呼ばれるL字型などの部品が設置されています。このトラップには「封水(ふうすい)」と呼ばれる水が常に溜まっており、この水が下水管からの悪臭や害虫が室内に上がってくるのを防ぐ「フタ」の役割を果たしているのです。
しかし、何らかの理由でこの封水がなくなってしまうと、下水管と部屋が直結してしまい、急激にドブ臭さが逆流してきます。これが「封水切れ」の正体です。
封水切れが起こる主な原因は二つあります。一つは、長期間の旅行や出張などで洗濯機を使わなかったことによる「蒸発」です。もう一つは、排水口に溜まった髪の毛や糸くずが水を吸い上げ、排水管側へ流し出してしまう「毛細管現象」です。
まずは、最も簡単な応急処置を試してみましょう。もし原因が単なる蒸発であれば、排水口にコップ1〜2杯の水をゆっくりと注ぎ込むだけで、封水が補充されて臭いがピタリと止まることがあります。または、洗濯機の電源を入れ、一番短い時間で「洗い」や「すすぎ1回」だけ運転させることでも、排水トラップに新しい水を溜めることができます。これで臭いが収まれば、ひとまず安心です。
排水トラップの分解と掃除手順(縦型・ドラム式共通)

応急処置で水を足しても臭いが改善しない場合、排水トラップ自体がひどい汚れで機能不全を起こしている可能性が高いです。洗剤カス、皮脂汚れ、髪の毛、糸くずなどが長年蓄積し、ヘドロ化しているのです。このヘドロ自体が悪臭を放つだけでなく、毛細管現象を引き起こして封水切れを誘発します。
ここでは、縦型・ドラム式問わず共通の、排水トラップの本格的な掃除手順を解説します。
まず、安全のために洗濯機の電源プラグを抜き、蛇口(止水栓)を閉めてください。次に、排水口から排水ホースをゆっくり引き抜きます。この時、ホース内に残った水(残水)がこぼれることがあるので、必ずバケツや洗面器で受けてください。
排水口が見えたら、フタやエルボ(L字型のパイプ)、その下にある目皿などの部品を、説明書を確認しながら(多くは回すだけで)取り外します。取り外した部品は、使い古しの歯ブラシなどを使って、付着したヘドロや髪の毛を物理的にこすり落としましょう。
部品を外した奥の排水管には、市販の液体パイプクリーナー(塩素系のもの)を規定量流し入れ、製品に記載されている時間(15~30分程度)放置します。
時間が経ったら、バケツに汲んだ水でクリーナーをしっかり洗い流し、取り外した部品を元の順序で組み直せば完了です。
ここで非常に重要な注意があります。塩素系のクリーナーを使用する際、絶対に「酸性タイプ」の製品と混ぜないでください。有毒な塩素ガスが発生し、命に関わる危険があります。ただし、同じく塩素系の漂白剤(「キッチンハイター」など)は塩素系クリーナーと同じ成分のため、混ぜても有毒ガスは発生しません。
見落としがちな排水ホース内部のヘドロ洗浄

排水トラップをピカピカに掃除しても、まだドブ臭さが残る…そんな時に見落とされているのが「排水ホース」の内部です。
洗濯機の排水ホースは、多くの場合、蛇腹(じゃばら)構造になっていたり、設置スペースの都合で複雑に曲げられたりしています。この凹凸やカーブの部分に、洗剤カスや皮脂汚れ、カビがヘドロとなって長期間こびりつき、それ自体が強烈な悪臭の発生源となるのです。
さらに厄介なのは、このホース内の汚れが、排水トラップの詰まりや毛細管現象による封水切れを誘発する「大元」になっているケースが多いことです。排水口のトラブルは、実は「ホース→トラップ→封水切れ」という連鎖で起きていることも少なくありません。
排水ホースの内部を掃除するには、市販のホース専用洗浄剤を使う方法もありますが、ここでは塩素系漂白剤(キッチンハイターなど)を使った洗浄方法をご紹介します。
まず、ホースを排水口側だけ外し、洗濯機本体側は付けたままにします(本体側を外すのは水漏れリスクが高いため推奨しません)。外したホースの先端をバケツに入れ、内部の汚れた水を排出します。
次に、ホースの先端にラップなどを敷いて輪ゴムで固定し、こぼれないように受け皿状にします。そこに塩素系漂白剤を適量流し込み、30分ほど放置します。ホースを軽く左右に揺らしたり、蛇腹部分を揉むようにしたりすると、内部の汚れと漂白剤がよく馴染みます。
時間が来たら、輪ゴムとラップを外し、汚水をバケツに一気に排出してください。驚くほど黒い水やヘドロの塊が出てくることがあります。最後に、ホースを排水口にしっかり戻して完了です。
ドラム式特有「乾燥による封水蒸発」の罠
ここまでは縦型・ドラム式に共通する内容でしたが、もしあなたがドラム式洗濯乾燥機をお使いの場合、特有の「落とし穴」があります。それは、洗濯後の「乾燥機能」の使用が、封水切れを直接引き起こすケースです。
ドラム式洗濯機の乾燥機能は、ヒートポンプ式であれヒーター式であれ、高温の(あるいは乾いた)空気を当てて衣類を乾かします。この時、運転の仕組み上、その熱や空気の流れが排水口側にも影響し、排水トラップに溜まっている「封水」を蒸発させてしまうことがあるのです。
メーカーの多くは、乾燥機能を搭載したドラム式洗濯機の排水トラップ設計において、蒸発対策を組み込んでいます。ただし、機種によって自動補充機能の有無や仕様が異なるため、一律に「すべてのドラム式に自動補充機能がある」とは限りません。
乾燥終了後に電源を切るタイミングについては、機種の取扱説明書に従うことが重要です。多くの機種では乾燥運転終了後に自動で電源がオフになる設計になっていますが、すべての機種がそうとは限りません。
「乾燥機能を使った日だけ、なぜか急に臭う」と感じる場合は、この現象が原因である可能性があります。対策としては、機種の取扱説明書を確認し、推奨される操作方法に従うこと、および定期的に排水トラップを確認することが有効です。
「洗濯機がドブ臭い」を繰り返さないための徹底予防策
- それは下水?洗濯槽内部のカビ臭いニオイの見分け方
- メーカー推奨「塩素系」洗濯槽クリーナーでの槽洗浄
- 絶対NG!クエン酸や重曹が故障を招く危険性
- 悪臭を予防する4つの日々のメンテナンス術
それは下水?洗濯槽内部のカビ臭いニオイの見分け方

ここまで「排水口」が原因のドブ臭対策を解説してきましたが、もう一つの可能性も考えておく必要があります。それは、あなたが「ドブ臭い」と感じているその臭いが、実は下水の臭いではなく、洗濯槽の裏側で繁殖した「カビ」や「雑菌」の臭いである可能性です。
これらは原因が全く異なるため、対策も変わってきます。ここで、臭いの種類を正しく見分けましょう。
まず「下水臭・ドブ臭」は、今回解説してきた通り、排水口から逆流してくる明確な「下水」の臭いです。臭いの発生源が洗濯機の「足元」や「床」に近いのが特徴です。
次に「カビ臭」です。これは、洗濯槽の裏側(洗濯槽と、それを受け止める水槽の間)に、溶け残った洗剤カスや皮脂をエサにして黒カビが大量発生している状態です。洗濯物を取り出すためにフタを開けた瞬間、ムワッと感じる湿った臭いがこれにあたります。決定的な証拠は、洗濯後の衣類に付着する「黒いワカメのようなピロピロしたカス」です。これが確認できたら、原因は排水口ではなく「洗濯槽」で確定です。
最後に「雑巾臭・生乾き臭」です。これは、洗濯機ではなく「洗濯物」自体に雑菌(モラクセラ菌など)が繁殖してしまっている状態です。衣類が濡れると臭いがぶり返すのが特徴で、この場合は洗濯機の掃除ではなく、該当する衣類を煮沸消毒したり、酸素系漂白剤でつけ置き洗いしたりする必要があります。
もし、あなたの悩みが「カビ臭」や「黒いカス」であるなら、次のステップで紹介する「槽洗浄」が正しい解決策となります。
メーカー推奨「塩素系」洗濯槽クリーナーでの槽洗浄
前のステップで「カビ臭」や「黒いカス」が確認できた場合、排水口の掃除をしても臭いは解決しません。洗濯槽の裏側にこびりついた黒カビを徹底的に除去する「槽洗浄」が必要です。
ここで重要になるのが、使用する「洗濯槽クリーナー」の種類です。クリーナーには大きく分けて「塩素系」と「酸素系」の2種類があり、特徴が全く異なります。
「塩素系」クリーナーは、メーカー純正品に代表されるタイプで、強力な塩素の力でカビや汚れを「分解・溶解」して洗い流します。洗浄力が非常に高く、除菌・消臭効果にも優れ、多くの洗濯機メーカーが使用を推奨しています。掃除時間が短い(約40分~1時間)のもメリットです。各メーカーの公式ウェブサイトにて、推奨される塩素系クリーナーの型番や製品を確認できます。
一方、「酸素系」クリーナー(「カビトルネード」など)は、発泡する泡の力で汚れを「剥がし取る」タイプです。塩素特有のツンとした臭いがなく、剥がれたカビが目に見えるのが特徴ですが、掃除に時間(4~6時間)がかかります。
ここで、ドラム式洗濯機をお使いの方に最も注意していただきたい点があります。
ドラム式洗濯機には、一般的に「酸素系」クリーナーは推奨されていません。
理由は、酸素系クリーナーは洗浄中に激しく発泡するため、使用水量が少ないドラム式ではセンサーが「異常な泡立ち」や「水量過多」と誤検知する可能性があるためです。これが洗浄効果に悪影響を与える可能性があります。
縦型・ドラム式を問わず、確実な効果を求めるなら、メーカー推奨の「塩素系」クリーナーで、月に1度の「槽洗浄コース」を実行するのが最も正解と言えます。
| 比較項目 | 塩素系クリーナー | 酸素系クリーナー |
|---|---|---|
| 洗浄メカニズム | 汚れを分解して溶かす | 泡の力で汚れを剥がし取る |
| 洗浄力(カビ) | ◎(強力・メーカー推奨) | ◯ |
| 所要時間 | 短(約40分~1時間) | 長(約4~6時間) |
| ニオイ | 強い(要換気) | 少ない |
| ドラム式洗濯機 | ◎(推奨) | △(各機種の取扱説明書を確認) |
| 縦型洗濯機 | ◎ | ◎ |
| 特徴 | 根本から溶解・除菌 | 剥がれた汚れが目に見える |
絶対NG!クエン酸や重曹が故障を招く危険性
インターネット上の生活情報サイトやSNSでは、「環境に優しい」「安全」として、クエン酸や重曹を使った洗濯機の掃除方法が紹介されていることがあります。しかし、これらの使用については注意が必要です。
複数の大手洗濯機メーカーは、公式ウェブサイトやFAQなどで、洗濯機での「重曹・お酢・クエン酸」の使用に対して慎重な姿勢を示しています。
その理由は、これらの成分が洗濯機の「故障」を招く可能性があるためです。
まず「重曹(アルカリ性)」ですが、重曹は水に溶け残りやすい性質があります。特に硬水の地域では、溶け残った重曹が洗濯槽の裏や排水経路で固形化し、排水ホースや排水コックを詰まらせる原因となる可能性があります。結果として「排水エラー」が表示され、洗濯機が停止してしまうリスクがあります。
次に「クエン酸」や「お酢(酸性)」です。これらは酸性が強く、金属を腐食させる(サビさせる)作用があります。洗濯機の内部には、水を制御するバルブやセンサー、回転軸のベアリングなど、精密な金属部品が多数使われています。酸がこれらの部品に触れると、サビや腐食を引き起こし、水漏れやセンサー異常、最終的には運転不良という深刻な故障に直結する可能性があるのです。
各メーカーの見解は異なる場合がありますので、使用を検討する際は、ご自身の洗濯機の取扱説明書またはメーカーの公式ウェブサイトで確認することを強く推奨します。洗濯機の掃除には、メーカーが推奨する専用の「洗濯槽クリーナー」を使用することが最も安全です。
悪臭を予防する4つの日々のメンテナンス術
排水口の掃除や槽洗浄で一度臭いをリセットできたら、今後はその不快な臭いを再発させないための「予防」が大切です。日々のちょっとした心がけで、洗濯機を清潔に保つことができます。
第一に、洗濯槽を「乾かす」ことです。カビや雑菌は「湿気」が大好きです。洗濯が終了したら、洗濯機のフタ(ドラム式の場合はドア)はすぐに閉めず、開けっ放しにして内部の湿気をしっかり逃がしましょう。ただし、ドラム式の場合は、小さなお子様やペットが中に入らないよう、周囲の安全に十分注意してください。
第二に、「フィルター類」のこまめな掃除です。縦型の「糸くずフィルター」や、ドラム式の「排水フィルター(ゴミ取りネット)」には、洗濯のたびに糸くずや髪の毛が溜まります。これを放置すると、湿気と相まってカビや雑菌の温床となり、悪臭の原因になります。フィルターのゴミは洗濯のたびに捨て、定期的に水洗いして清潔に保ちましょう。
第三に、洗剤や柔軟剤は「適量」を守ることです。「多く入れればきれいになる」というのは誤解です。特に水量が少ないドラム式洗濯機では、過剰な洗剤は溶け残り、そのまま洗濯槽の裏側に蓄積してカビの栄養源(エサ)になってしまいます。必ず製品に記載されている適量を守り、最近の液体洗剤自動投入機能付きの機種では、設定が濃すぎないか見直してみましょう。
第四に、「定期的な槽洗浄」の実行です。目に見えなくても、洗濯槽の裏側は少しずつ汚れていきます。月に1回程度を目安に、メーカー推奨の塩素系クリーナーを使った「槽洗浄コース」を実行し、カビが繁殖する前に対処する習慣をつけましょう。
総括:洗濯機が急にドブ臭い原因は排水口!正しい対処で臭いを断つ
この記事のまとめです。
- 洗濯機から「急に」ドブ臭い臭いがした場合、原因の9割は洗濯槽ではなく「排水口」である
- 排水口には下水の臭いを防ぐ「排水トラップ」と「封水(ふうすい)」という仕組みがある
- 急なドブ臭は、封水がなくなる「封水切れ」によって下水臭が逆流している状態である
- 封水切れの応急処置は、排水口にコップ1〜2杯の水を注ぎ、封水を補充することである
- 水を足しても臭う場合、排水トラップにヘドロ(洗剤カス、皮脂、髪の毛)が蓄積している
- 排水トラップは分解し、部品を歯ブラシで洗い、内部を液体パイプクリーナーで掃除する必要がある
- 塩素系クリーナーと酸性タイプ(クエン酸など)の洗剤が混ざると有毒ガスが発生し危険である
- 見落としがちな「排水ホース」の蛇腹部分もヘドロの温床であり、塩素系漂白剤で洗浄する
- ドラム式洗濯機は、乾燥機能の熱で封水が蒸発することがある
- 乾燥終了後すぐに電源を切ると、自動封水補充が作動せず、臭いの原因になる
- 洗濯槽のカビ臭は「黒いワカメのようなカス」で判別でき、ドブ臭とは原因が異なる
- 槽洗浄にはメーカー推奨の「塩素系クリーナー」が最も効果的である
- ドラム式洗濯機に「酸素系クリーナー」を使うと、泡で誤作動し強制排水されるためNGである
- メーカーは「クエン酸」や「重曹」の使用を推奨していない(故障の原因)
- 予防には、洗濯後のフタ開放、フィルター掃除、洗剤の適量、月1回の槽洗浄が有効である

